免」
又「此方《こっち》へ這入れ」
藤「どうも誠に」
又「何も最早聴かんで宜しい、再度欺かれたぞ、小増が来られなければ来ぬで宜しい、飲食《のみくい》は手前したのだから払うが、今晩の揚代金|殊《こと》に小増に遣わした二十金は只今持って来て返せ、不埓至極な奴、斯様《かよう》な席だから兎や角云わぬが、余りと申せば怪《け》しからん奴、金を持って来て返せ」
藤「何ともどうも私共《わたくしども》には」
又「いや私《わたくし》どもと云っても手前何と云った…弁《わき》まえぬか」
婆「一寸水司はん、生憎今日も差合《さしあい》があって」
又「黙れ、婆アの云う事は採上《とりあ》げんが、これ藤助、其の方は何と申した、二十両遣わせば小増は相違なく参りますと申したではないか、男が請合って、それを反故《ほご》にする奴があるか、男子たるべき者が」
藤「中々男子だって然《そ》ういう訳には参りませんので、この廓では女の子に男が遣《つか》われるので、私《わたくし》どもの云う事は聴きませんからね、どうも」
又「これ」
藤「あいた、痛うございます、何をなさる」
又「これ宜《よ》くも己《おれ》を欺いたな、此奴《こやつ》め」
藤「
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