《あひる》だか小鍋立《こなべだて》の楽しみ酒、そうっと立聴《たちぎゝ》をするとお梅だから、七兵衞はむっと致しますのも道理、身代を傾け、こんな遠国へ来て苦労するも此の女ゆえ、実に斯《こ》う云うあまッちょとは知らなんだ、不実な奴と癇癖《かんぺき》が込上げ、直ぐに飛込んで髻《たぶさ》を把《と》ってと云う訳にもいきません、坊主ですから鉄鍋の様に両方の耳でも把るか、鼻でも※[#「鼻+りっとう」、第3水準1−14−65]《そ》ごうかと既に飛込みに掛りましたが、いや/\お梅もまさか永禪和尚に惚れた訳でも無かろう、この和尚に借金もあり、身代の為にした事かと己惚《うぬぼれ》て、遠くから差配人が雪隠《せっちん》へ這入った様にえへん/\咳払いして、
七「御免なさい」
永「おゝ誰《たれ》かと思うたら七兵衞さん、此方《こっちゃ》へお這入りなさい」
七「へい御無沙汰を致しました、お梅が毎度御厄介に成りまして」
永「いゝやお前も不自由だろうが綿入物《わたいれもの》が沢山有るので、着物を直すにもなア、あまり暮の節季になると困るから、今の中《うち》にと云うてな斯《こ》うやって精出してくれる、私《わし》も今日は好《よ》い
前へ 次へ
全303ページ中71ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング