れて居りますから、何事もお梅の云う通りに行届《ゆきとゞ》き、亭主は窮して居りますから、固より不実意の女と見えて、永禪和尚の情にひかされて宗慈寺へ日泊《ひどまり》を致す様に成りましたが、お梅は年三十になりますから少ししがれて見えますが、色ある花は匂い失せずの譬《たと》え、殊《こと》に以前勤めを致した身でございますから取廻しはよし、永禪和尚の法衣《ころも》を縫い直すと申して、九月から十月の中頃まで泊り切りで、家《うち》はお繼という十二歳になる娘ばかりで、一日も帰って来ませんで、まことに不都合だから、藤屋七兵衞は腹立紛れに寺へ来て見ると、台所に誰《たれ》も居りません。
七「庄吉《しょうきっ》さん……お留守でげすか……御免なせえ」
 と納所部屋へ上って、
七「開けても宜《よ》うがすか……おや眞達さんも誰も居ない、何処《どこ》へお出でなさった……旦那様お留守でげすか、お梅は居りませんか」
 と納所部屋から段々|庫裏《くり》から本堂の方へ来ると、本堂の後《うしろ》に一寸《ちょっと》した小座敷がございます、此処《こゝ》にお梅と二人で差向い、畜生めという四つ足の置火燵《おきごたつ》で、ちん/\鴨だか鶩
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