宜《え》えじゃア、どの様な事が有っても此処《こゝ》は離れやアせんじゃ、後住《ごじゅう》を直して、裏路《うらみち》の寂しい処へ隠居家《いんきょや》ア建てゝ、大黒の一人ぐらいあっても宜えじゃア、七兵衞さんが得心なれば何うでもなる、此方《こっち》へ来て金も沢山貯めて居るが、嫌かえ、私はお前故斯う遣って人を殺して出家になり、お前が又来て迷わせる、罪じゃアないか」
 とぐっと手を引き、お梅の脊中へ手を掛けて膝を突寄《つきよ》せた時は、お梅はあゝ嫌と云うたら人を殺すくらいの悪僧、どんな事をするか知れぬ、何うかして此処を切抜け様と心配致すが、此の挨拶は何うなりますか、一寸《ちょっと》一息《ひといき》つきまして。

        十七

 藤屋の女房お梅は、十三年振で図《はか》らずも永禪和尚に邂逅《めぐりあ》いまして、始めの程は憎らしい坊主と思いましたなれども、亭主が借財も有りますから一《いッ》か遁《のが》れと思いましたも、固《もと》より汚《よご》れた身体ゆえ、何うかして欺《だま》し遂《おお》せて遁れようと言いくるめて居ります中《うち》に、度々《たび/\》参ると、彼方《むこう》でも親切に致しますも惚
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