私《わし》は七軒町の曲角《まがりかど》で待伏《まちぶせ》して、あの朝善之進を一刀に切ったのは私じゃアぜ」
梅「あれまアどうも」
永「宜《よ》えか、斯《こ》う打明けた話じゃが切ってしまって眼が醒《さ》めて、あゝ飛んだ事をしたと思ったがもう為《し》てしまい是非がない、とても屋敷には居《い》られない、外《ほか》に知己《しるべ》がないから風《ふ》っと思い付き、此処《こゝ》に伯父が住職して居るから金まで盗んで高飛《たかとび》し、頭を剃《そっ》こかして改心するから弟子にしてと云うて、成らぬと云うを強《たっ》て頼み、斯う遣《や》って今では住職になって、十三年も衣を着て居るもお前故じゃないか、人を殺したのもお前故じゃ」
梅「何うもねえ、然《そ》うで、何うもねえまア、何うもねえ、元は私が悪いばかりで中根さんも然ういう事になり、罪作りを仕ましたねえ」
永「七兵衞さんは知るまいが、金を貸すもお前故だ、是まで出家を遂《と》げても、お前を見て私《わし》は煩悩が発《おこ》って出家は遂げられませんぜ」
梅「お前さん……あれ、何をなさる、いけませんよ、眞達さんが帰るといけません、あれ」
永「私《わし》ももう隠居しても
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