》へ来ると直《す》ぐ知れた、若いうち惚れたから知れるも道理、私は頭ア剃《そり》こかして此の宗慈寺へ直って、住職して最《も》う九年じゃアが、斯《こ》うなってから今まで女子《おなご》は勿論|腥《なまぐさ》い物も食わぬも皆お前故じゃア」
梅「私ゆえとは」
永「忘れやアしまい、お前が斯様《かよう》じゃア、榊原藩の中根善之進は間夫《ふかま》じゃアからと云うて、金を私《わし》の膝へ叩き付けてな忘れやアしまい」
梅「あれ昔の事を云っては困りますね、年の往《い》かない中《うち》は下《くだ》らないもので、女郎《じょろう》子供とは宜《よ》く云ったもので、冥利《みょうり》が悪いことで、その冥利で今は斯うやって斯う云う処へ来て、貧乏の世帯《しょたい》にわく/\するも昔の罰《ばち》と思って居りますよ」
永「丁度あのそれ忘れやアせんで、あの時叩付けられたばかりでない、大勢で悪口《あっこう》云われ、田舎武士と云って、手前などが女子《おなご》を買っても惚れられようと思うは押《おし》が強いなどと云って、重役の権《けん》を振《ふる》って中根が打擲《ちょうちゃく》して、扇子の要《かなめ》でな面部を打割られたを残念と思って、
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