「誠にねどうも、流行《はやり》っ妓《こ》ですから生憎《あいにく》お馴染が落合ってさ、斯《こ》う折の悪い時は仕様がないもので、立込んでね」
又「左様かね、予《かね》て聞くが、初会は座敷切りと聞くが全く左様か」
婆「まアね然《そ》う云った様なもので有りますから」
吉原の上等の娼妓ならお座敷切りという事も有りましたが、岡場所では左様なことは有りませんが、そこが国育ちで知りませんから、成程そうかと又四五日置いて来ましたが、また振られ、又二三日置いて来たが振って/\振抜かれるが、惚《ほれ》るというものは妙なもので、小増が煙草を一ぷく吸付けてお呑みなはいと云ったり、また帰りがけに脊中《せなか》をぽんと叩いて、
小増「誠に済まねえのだよ、今度|屹度《きっと》来ておくんなはい」
と云われるのが嬉しく思いまして、しげ/\通いましたが、又市も馬鹿でない男でございますから、終《しまい》には癇癪を発《おこ》して、藤助《とうすけ》という若者《わかいもの》を呼んで居ります。
婆「藤助どん行っておくれ、小増さんも時々顔でも見せて遣《や》れば好《い》いのに、酷《ひど》く厭がるから困るよ」
又「これ/\袴を出せ」
前へ
次へ
全303ページ中8ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング