すかは知らねえが、頑是《がんぜ》がねえ十《とお》にもなんねえ正太郎だから、少しぐれえの事は勘弁して下さえ」
七「あれさお婆さん極りを云って居るぜ、来ると愚痴を云うが、私《わし》の子だもの、奉公人も付いて居るわね……正太は又田舎のお婆さんに何か云ッつけたな」
正「何も云ッつけやアしない、お婆さんが彼方《あっち》へ連れて行くてえから行きてえや」
七「行きたいと」
婆「何ういう訳で大事の親父《おやじ》をまず捨てゝ、己《おら》が方の田舎へ来てえ、不自由してもと児心《こゞころ》にも思うは能《よ》く/\だんべえと思うからお呉んなさえ、縁切《えんきり》でお呉んなさえ」
七「そんな馬鹿な事を云ってはいけません」
婆「何故《なぜ》そんならぞんぜえに育てるよ」
七「ぞんざいに育てはしませんよ」
梅「旦那……正太郎が云ッつけたのでお婆さんは然《そ》うと思って居るのでしょう、私だっても頑是がないから、それは彼《あ》れも我儘を致しますが、邪慳《じゃけん》に育てることは出来ません、仏様の前も有りますから、私も来たての身の上で私が邪慳に育てるようなことは有りませんよ」
婆「邪慳にしないてえ、これが顋《あご》の疵《き
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