る、今からそれじゃアいけねえってねえ、一緒になってお父さんが拳骨で打《ぶ》って痛いやア」
婆「あれえ一緒になって、呆れたなア本当にまア、好《え》え、七兵衞どんに己《おれ》逢って、汝《われ》だけはお婆さんが連れて行《い》く、田舎だアから食物《くいもの》アねえが不自由はさせねえ、十四五になれば立派な処《とけ》へ奉公に遣って、藤屋の別家を出させるか、然《そ》うでなければ己が方の別家《べっけ》えさせるから一緒に行くか」
正「行きたいやア、だから田舎で食物が無くってもお母さんに抓《つね》られるより宜《い》いから行くよ」
七「何方《どなた》かお出でなすった……おやお出でなさい、榮二郎《えいじろう》お茶を持って来てお婆さんに上げな、田舎の人だから餅菓子の方が宜《い》いから……宜《よ》くお出でなすったね、お噂ばかり致して居りまして、此方《こちら》から一寸《ちょっと》上《あが》らなければ成らんですが、何分忙がしいので店を空けられないで、御無沙汰ばかり、まア此方へ」
婆「はい御免なせえ、御無沙汰アして何時《いつ》も御繁昌と聞きましたが、文吉も上《あが》らんではならねえてえ云いますが、秋口は用が多いで参《め
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