《せん》にはお弁当なんぞも届けて呉れるのだが、今度のお母《っか》さんが来てからは然《そ》う往かないの、お父さんが何処《どこ》かへ行ってもお土産に絵だの玩具《おもちゃ》だの買って来たが、此の頃は買って来ないでお母さんの物|計《ばか》り簪《かんざし》だの櫛《くし》だのを買って来て、坊には何にも買って来てくれないよ」
婆「汝《われ》のような可愛い子があっても子に構わず後妻《のちぞい》を持ちてえて、おすみの三回忌も経たねえうち、女房を持ったあから、汝よりは女郎《じょうろ》の方が可愛いわ……虐《いじ》めるか」
正「怖ろしく虐めるの、縁側から突飛《つきとば》したり…こんなに疵《きず》が有るよ、あのね裁縫《しごと》が出来ないに出来る振をして、お父さんが帰ると広げて出来る振をして居るの、お父さんが出て行《ゆ》くと、突然《いきなり》片付けて豌豆《えんどうまめ》が好きで、湯呑へ入れて店の若衆《わかいし》に隠して食べて居るから、お母さんお呉れって云ったら、遣《や》らないと云ってね、広がって居るから縫物《しごと》を踏んだら突飛して此処《こゝ》を打って、顋《あご》へ疵が出来たの」
婆「呆れた、大《でか》い疵があ
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