なら身請《みうけ》しようと云い、大金を出して其の翌年の二月藤屋の家《うち》へ入る。手に採《と》るな矢張野に置け蓮華草《れんげそう》、家《いえ》へ入ると矢張並の内儀《おかみ》さんなれども、女郎に似合わぬ親切に七兵衞の用をするが、二つになるお繼《つぎ》という女の子に九つになる正太郎《しょうたろう》という男の子で悪戯盛《いたずらざか》り、可愛がっては居りますけれども、何《ど》うも悪態をつき、男の子はいかんもので、
正「己《おら》ん処《とこ》のお母《かあ》はお女郎だ、本当の好《よ》い花魁ではない、すべた女郎だ」
なんどと申しますから、
増「小憎らしい、此の子供《がき》は悪態をつく」
と頬片《ほゝぺた》を捻《つね》る、股たぶらを捻る、女郎は捻るのが得手で、禿《かむろ》などに、
「此の子供《がき》アようじれってえよ」
などゝ捻るものでございます。正太郎を其の如くに捻ったり打擲《ちょうちゃく》を致しますから痣《あざ》だらけになります。さア奉公人は贔屓《ひいき》をする者もあり、又|先《せん》の内儀《おかみさん》が居《お》れば斯《こ》んな事はないなどと云い、中には今度の内儀は惣菜の中に松魚節《かつ
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