とぼけなすって、お小さい台は五拾疋でございます、大きい方は百疋で、中には六百文ぐらいのお廉《やす》いのもございます」
又「ふう百疋、成程よい遊女を揚げれば佳《よ》いのを取らなければならんのう、成程それでは酒は別だろうな」
若「へい召上りませんでも先《まず》一本は付けます」
又「百疋で肴は何のくらいなのが付くな」
若「へ……おとぼけでは困りますな、大概遊女屋の台の物は極《きま》って居りますが、小さい鯛が片へらなどで、付合《つけあわ》せの方が沢山でございます」
又「それは高いじゃアないか、越後の今町《いまゝち》では眼の下三尺ぐらいの鯛が六十八文で買える」
若「御冗談ばかり仰しゃいます」
又「厄介になろう」
若「有難う存じます、お揚《あが》んなさるよ」
「あいー」
 とん/\/\と二階へ上《あが》ると引付座敷《ひきつけざしき》へ通しましたが、又市は黒木綿の紋付に袴を穿いた形《なり》で、張肘《はりひじ》をして坐って居ると、二階廻しが参りまして、
婆「おやお出《い》でなはい」
又「初めて、手前《てまい》水司又市と申す者、勝手を心得ぬから何分頼む」
婆「何でございますねお前さん、瓢箪《ひょうたん》
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