云う」
若「へえ……楼名、えゝ増田屋《ましだや》と申します」
又「成程根津で増田屋と申すは大分名高いと聞くが、左様かえ増田屋で今の婦人は」
若「小増と申します」
又「成程増田屋で増《まし》を付けるのは榊原の家来で榊原を名乗るようなもので」
若「いえ左様な大した訳でもござりませんが」
又「国から出たてゞ何も知らぬが、何かえ揚代金《あげだいきん》は何《ど》のくらい致す、今の美人を一晩買う揚代は」
若「へい/\大概五拾|疋《ぴき》でございますが、あのお妓《こ》さんは只今売出しで、拾|匁《もんめ》で、お高いようでございますが、彼《あ》のくらいな子供|衆《しゅ》は沢山《たんと》はございませんな、へい」
又「拾匁、随分値は高いが、拾匁出して彼のくらいな美人を寝かそうと起そうと自由にするのだから、実に金銀は大切な物だのう」
若「えへ、まず兎も角もお上《あが》り遊ばしては如何」
又「だが登《あが》りもしようが、婦人を傍《そば》へ置いて唯《たゞ》寝る訳にも往《い》かんが、何か食物《しょくもつ》を取らんではならんが、酒と肴はどのくらいな値段であるか承わって置こう」
若「えへ……御存じ様でございましょう、お
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