い顔をして行《ゆ》く有様はどうも耐《たま》らぬな、どうも実にはア美くしい」
 と思って佇《たゝず》んで居りますと、後《うしろ》から女郎屋《じょろや》の若衆《わかいしゅ》が、
若「えへ……」
又「何《なん》だい後《うしろ》からげら/\笑って」
若「如何様《いかゞさま》でございます、お馴染《なじみ》もございましょうが、えへ……外様《ほかさま》からお尻の出ないようにお話を致しましょう、えへ……お馴染もございましょうがお手軽様に一晩お浮《うか》れは如何で、へい/\/\」
又「何だい貴公は」
若「えへ……御冗談ばかり、遊女屋の若者《わかいもの》で、どうも誠にはやへい/\」
又「遊女屋の若者、成程これは何だね大分左右に遊女屋が見えるが、全盛の所は承知して居《い》るが、貴公に聞けば分ろうが、今向うへ少し微酔で、顔へほつれ毛がかゝって、赤い顔をして男に手を引かれて行った美人があるが、彼《あ》れは何かえ遊女かえ、但《たゞ》しは堅気の娘のような者かえ」
若「へえ、只今へえ…御縁の深いことで、あれは手前方のお職《しょく》から二枚目をして居ります小増《こまし》と申します」
又「はア貴公の楼名《ろうめい》は何と
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