どと、天明の頃は大分《だいぶ》盛んだったと云うお話を聞きました。彼方此方《あちらこちら》を見ながら水司又市がぶらり/\と通掛りますると、茶屋から出ましたのは娼妓《しょうぎ》でございましょう、大島田《おおしまだ》はがったり横に曲りまして、露の垂れるような薄色の笄《こうがい》の小長いのを挿《さ》し、鬢《びん》のほつれ毛が顔へ懸りまして、少し微酔《ほろえい》で白粉気《おしろいけ》のある処《ところ》へぽッと桜色になりましたのは、別《べっ》して美しいものでございます。緋の山繭《やままゆ》の胴抜《どうぬき》の上に藤色の紋附の裾《すそ》模様の部屋|著《ぎ》、紫繻子《むらさきじゅす》の半襟《はんえり》を重ねまして、燃えるような長襦袢《ながじゅばん》を現《あら》わに出して、若い衆《しゅ》に手を引かれて向うへ行《ゆ》きます姿を、又市は一《ひ》と目見ますと、二十五で血気でございますから、余念もなく暫《しばら》く見送って居りましたが、
又「どうも実に嬋娟窈窕《せんけんようちょう》たる美人だな、どうも盛んなる所美人ありと云うが、実にないな、彼《あ》のくらいな婦人は二人とは有るまい、どうもその蹌《よろ》けながら赤
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