なって、重二郎の云う儘に表へ出に掛る。台所口の腰障子を開《あ》け、
重「大きに厄介になった…さア心配しなくも宜《よ》い、出なさい」
照「はい…金や長々お世話になりました」
きん「それじゃア直ぐに遠い田舎へいらっしゃいますか、親切にあゝ仰しゃって下さるから、本当に敵《かたき》を討ってお出でなさいよ」
照「誠に面目次第もございません」
重「口をきいてはいかん、さア/\」
 と二人を連れて出ると、傳助は提灯を持って路地に待って居りまして、
傳「誠に何うも宜く御勘弁なすって」
重「これ静かに致せ、両人《ふたり》を手討に致し他《た》を騒がしては宜しくないから」
傳「へい…」
重「人知れぬ処へ行って両人《りょうにん》とも討果すから袂《たもと》を押えて遁《にが》さぬように」
傳「へえ……へ宜しゅう」
重「これ提灯を腰へさせ」
傳「へい」
 と両人の袂を押えて重二郎に従って、池の端弁天通りから穴の稲荷の前へ参りますと、
重「これ/\、もう往来も途切れたな」
傳「へえー何うぞ御勘弁の出来ます事なれば願いとう、私《わたくし》は斯《こ》う云う事とは心得ませんで」
重「静《しずか》に致せ、照、山平、不埓至極な
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