の心掛は実に感心、云わず語らず自然と知れますな、と申すは昨年霜月三日にお兄様《あにさま》は何者とも知れず殺害《せつがい》され、如何《いか》にも残念と心得、御両親は老体なり、武士の家に生れ、女ながらも仇《あた》を討たぬと云う事はないと心掛けても、何《ど》うも相手は立派な士《さむらい》であり、女の細腕では討つ事ならず、誰《たれ》を助太刀に頼もう、親切な人はないかと思う処へ、親《ちか》しく出入《でいり》を致す山平殿、殊《こと》に心底も正しく信実な人と見込んだから、兄の仇討《あだうち》に出立したいと助太刀を頼んだので有ろうが、山平殿は私には然《そ》うはいかん、御養子前の大切の娘御を私が若い身そらで女を連れて行《ゆ》く訳には往《い》かん、両親の頼みがなければいかんなどと申されて、迚《とて》もお用いがないのを、止むを得ず助太刀をして下さいと照が再度貴公に頼んだは実に奇特《きどく》な事で、頼まれてもまさか女を連れて行《ゆ》く訳にもいかず、此方《こちら》は只管《ひたすら》頼むと云う、是は何うも山平殿も実に困った訳だが、私が改めてお頼み申す訳ではないが、山平殿、中根善之進殿を討ったは水司又市と私は考える
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