立腹して此《こ》れへ上って来た故、差向で居た上からは申訳《もうしわけ》は迚《とて》も立たぬ、さア済まぬ事をしたと云うので左様に驚きましたか、左様か、然《そ》うだろう、然うでなければ然う驚く訳はない、誠にきん貴様は迷惑だ…のう山平殿、役こそ卑《ひく》いが威儀正しき其の許《もと》が、中々常の心掛けと申し、品行も宜しく、柔和温順な人で、他人《ひと》の女房と不義などをうん…なア…為《す》る様な非義非道の事を致す人でないなア……が差向で居《お》ったが過《あやま》りであった、男女《なんにょ》七歳にして席を同じゅうせずで、申訳が立たぬと心得て、山平殿も恐れ入って居《お》らるゝ様子、照も亦済まぬ、何う言訳しても身のあかりは立つまい、不義と云われても仕方がない、身に覚えはないけれども是れに二人で居たのが過り、残念な事と心得て其の様に泣入って居《お》ることか、何とも誠に気の毒な、飛んだ処へ私が上って来たのう、そう云う訳は決してないのう、きん」
きん「はい/\決して夫《そ》れはそう云う、あの、其様《そん》などうも訳ではございませんから」

        十

重「だからノウ、私《わし》が養子に来ぬ前から照
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