て、亭主を欺《だま》し遂《おお》せて、他《ほか》で逢引する事が知れた時は、腹を立たぬ者は千人に一人もございません。武田重二郎は中根の家へ養子に来てからお照が同衾《ひとつね》を為《し》ないのは、何か訳があろうと考えを起して居ります処へ、家来傳助がこれ/\と証拠の文を見せたから、常と違って不埓至極な奴、さア案内しろと云う。傳助も飛んだ事を云ったと思っても今更仕方がありません。重二郎は団子屋のお金の家へ裏口から這入った時はおきんは驚きまして、
きん「何うか私《わたくし》が悪いからお嬢様をお助けなすって下さい」
と袖に縋《すが》るを振切って、どん/\と引提《ひっさ》げ刀で二階へ上《あが》りました時に、白島山平もお照も唯《た》だ恟《びっく》り致して、よもや重二郎が来ようとは思わぬから、膝に凭《もた》れ掛って心配して、何う致そう、寧《いっ》その事二人共に死んで仕舞おうかと云って居る処へ、夫が来たので左右へ離れて、ぴったり畳へ頭《かしら》を摺付《すりつ》けて山平お照も顔を挙《あ》げ得ません。おきんは是れは最《も》う屹度《きっと》斬ると思い、怖々《こわ/″\》ながら上《あが》って来て、
きん「何卒《
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