して、御新造様がお悪いのではございません、皆きんが悪いのでございますから何うぞ」
重「何だ袖へ縋《すが》って何う致す、放さんか、えい」
と袖を払って長い刀を引提《ひっさ》げて二階へどん/\/\/\と重二郎駈上ります。これから何う相成りますか一寸|一《ひ》と息《いき》致して。
九
引続《ひきつゞき》ましてお聴《きゝ》に入れますが、世の中に腹を立ちます程誠に人の身の害になりますものはございません。殊《こと》に此の赫《か》ッと怒《いか》りますと、毛孔《けあな》が開いて風をひくとお医者が申しますが、何《ど》う云う訳か又|極《ご》く笑うのも毒だと申します。また泣入《なきい》って倒れてしまう様に愁傷《しゅうしょう》致すのも養生に害があると申しますが、入湯《にゅうとう》致しましても鳩尾《みぞおち》まで這入って肩は濡《ぬら》してならぬ、物を喰ってから入湯してはならぬ、年中水を浴びて居るが宜《よ》いと申しますが、嫌な事を忍ぶのも、馴れるとさのみ辛いものではござりませぬ。何事も堪忍致すのは極く身の養生《くすり》、なれども堪忍の致しがたい事は女房が密夫《まおとこ》を拵《こしら》えまし
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