うおまさ》かえ…いゝえ此の頃出来た魚屋でございますから、器物《いれもの》が少《すけ》ないのでお刺身を持って来ると、直《すぐ》に後《あと》で甘※[#「赭のつくり/火」、第3水準1−87−52]《うまに》を入れるからお皿を返して呉れろと申して取りに来ますので」
 きんは魚屋と間違えて、
きん「少し待ってお出《い》でよ」
 と階子段《はしごだん》を下りて、
きん「魚政かえ、今お待ちよ」
 と障子を開けて見ると、魚屋とは思いの外《ほか》重二郎が刀を引提《ひっさ》げてずうと入り、
重「これ照が二階に参って居《お》るなら一寸《ちょっと》逢わして呉れよ」
きん「いゝえ御新造様は此方《こちら》へは入《いら》っしゃいません」
重「入っしゃいませんたって参って居るに相違ない、是に駒下駄があるではないか」
きん「あのそれは先刻《さっき》あの入《いら》っしゃいまして、それはあの、雨が降って駒下駄では往《い》けないから草履《ぞうり》を貸してと仰しゃいまして」
重「馬鹿な、痴《たわ》けた事を云うな、逢わせんと云えば直《じき》に二階へ通るぞ」
きん「はーい何卒《どうぞ》真平《まっぴら》御免遊ばして、何うぞ御勘弁遊ば
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