とで、私は心配致しますが、だからと申して黙っていても何うせ知れますからな」
重「何を」
傳「へえー、誠に何うも恐入って申上げられませんが、実は貴方様に対して御新造様がな、何うも何う云うものか、誠に恐入りますな」
重「大分恐入るが、何《なん》だい」
傳「へえ……申し上げませんければ他《ほか》から知れますからな、却《かえ》って御家名を汚《けが》すようになりますから、御両親様も……また貴方の名義を汚す一大事な事でございますから、外《ほか》のお方様なら申上げませんが、あなた様でございますから何うか内聞に願い、そこの処は世間に知れぬうち御工夫が付きますように参りましょうかと存じますが、何うか御内聞に、何うも何とも恐れ入りまして」
重「恐れ入ってばかりではとんと何だか分らんが、他の事と違って家名に障《さわ》ると、私《わし》が身は何うでもよろしいが、中根の苗字に障っては済まぬが、何《なん》じゃか言ってくれよ、よ、傳助」

        八

傳「実は申上げようはございませんが、もう往来も途切れたから申上げますが、御新造様は誠に怪《け》しからん、密夫《みそかお》を拵《こしら》え遊ばして逢引を致します
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