に育てられても継母が邪慳《じゃけん》にもしないが、気詰りであったけれど、当家へ養子に来てからは舅御《しゅうとご》が彼《あ》の通り好《よ》い方で、此の上もない仕合せで」
傳「へえ私《わたくし》は旧来奉公致しますが、旦那様も御新造様もいかつい事を云わないお方で、誠に私《わたくし》も仕合せで、実に彼《あ》アいう方でございますから、斯様《かよう》なことを申しては恐入りますが、若御新造様はすこしも御奉公遊ばさない、世間を御存じがない方でございますからな、あなたがお疲れの処へ、御両親様の御機嫌を取ってお長くいらっしゃる時には、御新造様が最《も》うお疲れだからと宜《よ》い様に云ってお居間に連れ申して、おすきな物で一杯上げる様にお気が付くと宜《よろ》しいが、余り遅くお帰りになるのが御意に入らぬのか知れませんが、つーと腹を立ったように、お帰りがあっても碌《ろく》にお言葉もかけない事がありますからな」
重「いゝや然《そ》うでない、御新造は奉公せぬに似合わぬ中々|能《よ》く心付くよ」
傳「へえ……何うも私《わたくし》も旧来奉公致しますが、あなた様には誠に何《ど》うも何《なん》とも済まぬことで、実に恐入ったこ
前へ 次へ
全303ページ中34ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング