んよ」
山「露顕しては止むを得ない、何うしても割腹致すまでの事で」
きん「貴方は又そんな事を云って、仕様がございません、それじゃア相談の纏《まと》まり様がございません」
 と彼《あ》れの是れのと云って居りますと、折悪しく其の晩養子武田重二郎は傳助《でんすけ》と云う下男を連れて、小津軽《こつがる》の屋敷へ行って、両国を渡って帰り、御徒町《おかちまち》へ掛ると、
重「大分《だいぶ》傳助道が濘《ぬか》るのう」
傳「先程降りましたが宜《よ》い塩梅《あんばい》に帰りがけに止みました」
重「長い間|待遠《まちどお》で有ったろう」
傳「いえもう貴方お疲れでございましょう、御番退《ごばんびけ》から御用|多《おお》でいらしって、彼方此方《あちらこちら》とお歩きになって、お帰り遊ばしても直《すぐ》に御寝《おげし》なられますと宜しいが、矢張お帰りがあると、御新造《ごしんぞ》様と同じ様に御両親が話をしろなどと仰しゃると、お枕元で何か世間話を遊ばして御機嫌を取って、お帰り遊ばしても一口召上って、ゆる/\お気晴しは出来ませんで、誠に恐入りましたな」
重「何も恐入ることはない、私《わし》は仕合せだのう、幼年の時継母
前へ 次へ
全303ページ中33ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング