ので」
重「ふう嘘を云え、左様な嘘をつくな決して左様な事は有りません、世間の悪口《わるくち》だろうから取上げるなよ、私《わし》が来ましてから御新造は些《ちっ》とも他《ほか》へ出た事はないぞ、弁天へ参詣に行《ゆ》くにも小女が附き、決して何処《どこ》へも行った事はない」
傳「それが有るのでへえ……実に恐入りますがな、不埓至極なのはお金と申す旧来勤めて居りました団子茶屋おきん、へい彼奴《あいつ》が悪いので、へい、奉公して一つ鍋の飯を喰いました女でございますから宜《よ》く私《わたくし》は存じて居りますが、口はべら/\喋るが、彼奴が不人情で怪《け》しからん奴で、お嬢様を自分の家《うち》の二階で男と密会をさせて、幾らかしき[#「しき」に傍点]を取る、何如《いか》にも心得違いの奴で」
重「そりゃア誰《たれ》がよ、誰が左様なる事を云う、相手は何者か」
傳「相手はそれは何《ど》うも、白島山平と云う彼《あ》の下役の山平で、私《わたくし》も外《ほか》の方なら云いませんが貴方様だから、お舅御様《しゅうとごさま》のお耳にはいらぬ様にお計らいが附こうと思って申しますが、何うも恐入ります」
重「嘘を云え、白島山平は
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