しも知りません、最《も》う身を切られるより辛うございますけれども、あなたのお言葉でございますから、背《そむ》かず武田から養子致します」
 と云いながら、わっと泣き倒れました。

        七

 おきんも山平も安心して、
きん「宜く仰しゃいました、それで何うでも成ります、またねえ時々お逢い遊ばす工夫もつきますから」
 と漸《ようや》く身上《みのうえ》の相談をして、お照は宅へ帰って、得心の上武田重二郎を養子にした処が、お照は振って/\振りぬいて同衾《ひとつね》をしません。家付の我儘娘、重二郎は学問に凝《こ》って居りますから、襖《ふすま》を隔てゝ更《ふけ》るまで書見をいたします。お照は夜着《よぎ》を冠《かぶ》って向うを向いて寝てしまいます。なれども武田重二郎は智慧者《ちえしゃ》でございますから、私《わし》を嫌うなと思いながらも舅姑《しゅうと》の前があるから、照や/\と誠に夫婦中の宜い様にして見せますから、両親は安心致して居ります中《うち》、段々月日が立ちますと、お照は重二郎の養子に来る前に最う身重《みおも》になって居りますから、九月の月へ入って五月目《いつゝきめ》で、お腹《なか》が大
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