うけれども、思い切って貴方、お厭でも御養子を遊ばせな、此の事が知れると物堅い旦那様だからきんもきんだ、長らく勤めて居ながら娘を二階で逢引をさせるとは不埓《ふらち》な女だと仰しゃって私《わたくし》が斬られるかも知れませんよ、ねえ彼《あ》ア云う御気象ですから、ねえ御養子をして置いて時々お逢い遊ばせよう、然うすりゃア知れやアしませんよ、あの釜浦《かまうら》様の御新造《ごしんぞ》様みたいな、彼アいう事もありますから、宜《よ》いじゃアありませんか、然う遊ばせよ」
山「誠に手前も夢の昔と諦めますから、申しお嬢様|嘸《さぞ》不実な者と思召《おぼしめ》すでござりましょうが、この白島山平を可愛相《かわいそう》と思召すなら、あなた親御様の仰しゃる通り武田から御養子をなすって下さい、只今も金の申す通り、お聴済《きゝず》みがなければ止むを得ず、手前どうも切腹でもしなければならん訳で」
きん「貴方ア切腹なさると仰しゃるし、お嬢様は自害などと困りますねえ……お嬢様何う遊ばしますよ」
照「はい、それ程白島様が御心配遊ばす事なれば致方《いたしかた》がありませんから、それにお国に奥様もお子様もある事は私《わたくし》は少
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