の上のお方と存じます、左もなくて腕がなければ中々又市を一|撃《うち》にお打ちなさる事は出来ぬ事でな、えゝ御尊名は何と仰しゃるか必ず然るべきお方でございましょう」
宰取「うーん、なに私《わっち》は弥次馬で」
山「矢島様と仰しゃいますか」
宰取「うん、なに矢島様じゃアねえ、只|私《わっち》は見兼たからぽかり極めたので……お前さん親の敵だって親が在《あ》るじゃアねえか」
山「いやこれは手前養女でござる、実父は湯島六丁目の糸問屋《いとどいや》藤屋七兵衞と申す、その親が討たれた故に親の敵と申すので、只今では手前の娘に致して居ります」
宰取「えゝ藤屋七兵衞、おい、それじゃア何か、妹のお繼か」
繼「あれまア何うも、お前は兄《にい》さんの正太郎さんでございますか」
六十三
正「おゝ正太郎だ……何うも大きくなりやアがった此畜生《こんちきしょう》、親父《ちゃん》は殺されたか……えゝなに高岡で、然《そ》うか、己《おら》ア九才《こゝのつ》の時別れてしまったから、顔も碌《ろく》そっぽう覚えやしねえくれえだから、手前《てめえ》は猶覚えやアしねえが、己《おれ》が此処《こゝ》へ仕事に来ていると前《
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