こッつら》を打たれるとべったり顔に泥が付いたが、よもや斯ういう者が出ようとは思わぬ所だから、是れに転動《てんどう》したと見え、ばら/\/\/\と横手へ駈出した。すると宰取は追掛《おっか》けて行って足を一つ打払《ぶッぱら》うと、ぱたーり倒れましたが、直ぐに起上ろうとする処を又《ま》た打《ぶ》ちますと、眉間先《みけんさき》からどっと血が流れる。すると見物は尚わい/\云う。
見物「そら逃げた殴れ/\」
と云う奴があり、又石を投げる弥次馬が有るので、又市は眼《め》が眩《くら》んで、田月堂という菓子屋へ駈込んだから菓子屋では驚きました。店の端先《はなさき》へ出て旦那もお内儀《かみさん》も見ている処へ抜身《ぬきみ》を提《さ》げた泥だらけの侍が駈込んだから、わッと驚いて奥へ逃込もうとする途端に、蒸《ふか》したての饅頭《まんじゅう》の蒸籠《せいろう》を転覆《ひっくりかえ》す、煎餅《せんべい》の壺が落ちる、今坂《いまさか》が転がり出すという大騒ぎ。商人《あきんど》の店先は揚板《あげいた》になって居て薄縁《うすべり》が敷いてある、それへ踏掛けると天命とは云いながら、何う云う機《はず》みか揚板が外《はず》
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