とは違って真剣で敵を討とうという時になると、只斬ろうという念より外《ほか》はございませんから、決して正眼だの中段などという事はない、唯双方相上段に振上げて斬ろう/\と云う心で隙《すき》を覘《うかゞ》う、水司又市も眼《まなこ》は血走って、此の小娘《こあま》只一|撃《うち》と思いましたが、一心|凝《こ》った孝女の太刀筋《たちすじ》、此の年四月から十月まで習ったのだが一生懸命と云うものは強いもので、少しも斬込む隙がないから、此奴《こいつ》中々剣術が出来る奴だなと思い、又市も油断をしませんで隙が有ったら逃げようかなんと云う横着な根生《こんじょう》が出まして、後《あと》へ段々|下《さが》る、此方《こちら》も油断はないけれども年功がないのはいかぬもので、段々|呼吸遣《いきづか》いが荒くなって労《つか》れて来るから最早死物狂いで、
繼「思い知ったか又市」
 と飛込んで切込むのを丁と受け、引く所を附け入って来るから、一足《ひとあし》二足《ふたあし》後へ下ると傍《そば》の粘土《ねばつち》に片足踏みかけたから危ういかな仰向《あおむけ》にお繼が粘土の上へ倒れる所を、得たりと又市が振冠《ふりかぶ》って一打《ひ
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