では間に合わない、何処《どこ》の差配人さんへ然《そ》う云うのだ」
丙「差配人さんが間に合わぬなら自身番へ知らせろ……あッあー…危ねえ/\敵討は何とか云いましたか」
乙「何と云ったか聞えやアしない」
乙[#「乙」はママ]「何とか云ったッけ、汝《なんじ》を討たんと十八年」
甲「何を云やアがる騒々しい喋っちゃアいけねえ」
丙「あゝ危ねえ/\」
 と拳《こぶし》を握って見ている、人は人情でございますから、何うぞして娘に勝《かた》せたい、娘に怪我をさしたくないと見ず知らずの者も心配して、橋の袂《たもと》に一抔人が溜《たま》って居りますが、中々助太刀に出る者は有りません。
甲「向うに侍が二人立って見ているが、彼奴《あいつ》が助太刀に出そうなもんだ、何だ覗いて居やアがる、本当に不人情な侍だ、あの畜生《ちきしょう》打擲《ぶんなぐ》れ」
 とわい/\云う中《うち》に、
繼「親の敵思い知ったか」
 と一足《ひとあし》踏込んで切下《きりおろ》すのを、ちゃり/\と二三度合せたが、一足|下《さが》って相上段《あいじょうだん》に成りました。よく上段に構えるとか正眼《せいがん》につけるとか申しますが、中々剣術の稽古
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