有るものでございますから、其所《そこ》は相手が女ながらも心に怯《おく》れが来て段々後へ下る。すると段々見物の人が群《たか》って、
甲「何でげす」
乙「今私は瀬戸物屋へ買物に来て見ていると、だしぬけに親の敵と云うから、はッと跡へ下ろうと思うと、はッと土瓶を放したから、あの通り石の上へ落ちて毀《こわ》れてしまいました、あゝ驚きました、何うも彼《あ》の娘でげすな」
甲「へえ彼の娘が敵討だと云って立派な侍を狙うのですか、感心な娘で、まだ十七八で美《い》い女だ、今は一生懸命に成ってるから[#「成ってるから」は底本では「成ってるらか」]顔つきが怖いが、彼《あ》れが笑えば美い女だ」
乙「へえ、それは感心、あゝ云う巡礼の姿に成って居るが、やっぱり旗下《はたもと》のお嬢様か何かで、剣術を知らんでは彼《あ》の大きな侍に切掛けられアしない、だが女一人じゃア危ないなア、誰か出れば宜《い》いなア」
丙「危ないから無闇に出る奴は有りやアしません」
甲「だって向うは大きな侍、此方《こっち》はか弱い娘で……あゝけんのんだ」
と見物がわい/\と云う。
丙「おい早く差配人《おおや》さんへ知らせろ」
丁「おれの差配人さん
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