も来ますよ」
山「只今は何方《いずかた》に」
久「今は小川町《おがわまち》の上屋敷に居ります」
山「若《も》しお下屋敷へお出でになったら一寸《ちょっと》教えて下さいませんか、何《いず》れそりゃア尋常漢《たゞもの》では有りませんなア、こりゃア見たいな、何ういう男か一度は見て置きたいが何うか一寸ねえ」
久「そりゃア造作もない事だから知らせましょう」
山「じゃア一寸知らせて下さい、別にお礼の致し方は無いが、あなたの非番の時に無代《たゞ》療治をして、好《い》い茶を煎《い》れて菓子を上げる位の事は致しますから」
久「それははや、そんな旨い事は無い、こりゃア有難いが、それは茶と菓子ばかりで療治の代を取らぬと云うこたア有りません、今度来たら屹度《きっと》知らせますが、滅多に此方《こちら》へは来ません」
山「何うか知らせて」
久「えゝ宜しい」
山「さア御療治」
 と云うので療治を致して、旨い菓子などを食わせて帰しました。跡で山平は、
山「屹度それに相違ない、何うかして見顕《みあら》わして遣りたいもの」
 と、中村に頼んで櫻川の来るのを待って居ると、天命|免《のが》れ難く、十月十五日に猿子橋でお繼が水司
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