、お照さまに御両親様から急に御養子を遊ばせと仰しゃるので、嬢様は否《いや》だと云って弁天様へ禁《た》ったと仰しゃったそうでござりますが、お父様が聴かぬので、一旦約束したから変替《へんがえ》は出来ぬと云うので、仕方がないから私《わたくし》は養子をする気はない、どんな事が有っても自分が約束したからは何処迄《どこまで》も強情を張る積りだが、お父様が腹を切るの何《なん》のと云うから、寧《いっ》そ身を投げて死んでしまおうと、小さいお子様の様な事を仰しゃるので困りますよ、何か云えば直《すぐ》に自害をするのなどと詰らん事を云うので困ります、私《わたくし》は思案に余りますから貴方をお呼び申したので」
山「ふう成程、そうして何方《どちら》から御養子を」
きん「お嬢様の仰しゃるには、白島様には云わぬ方が宜《よ》いと仰しゃいますが、あの武田重二郎様ね、それあの厭《いや》な気の詰るお方で、私も御奉公して居るうち見ましたが、偏屈な嫌《いや》に堅苦《かたっくる》しいね嫌な人で、実に困った訳でございますけれども、否《いや》と言切る訳にも往《ゆ》きませんから誠に心配していらっしゃいます」
山「お照さん……この山平は江
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