、何だ」
妻「まア其様《そんな》にお怒《おこ》り遊ばすな」
 と無理に手を取って娘の居間へ連れて行《ゆ》き、種々《いろ/\》言含めたが唯《たゞ》泣いて計《ばか》り居て返答を致しませんのは、屋敷|内《うち》の下役に白島山平《しろしまさんぺい》という二十六歳になります美男と疾《と》うから夫婦約束をして居りました。遠くして近きは恋の道でございます。逢引する処が別にございませんから、旧来|家《うち》に奉公を致して居りましたおきんと云う女中が、上野町《うえのまち》に団子屋をして居るので、此の家《うち》の二階で山平と出会いますので、是が心配でございますから、おきんの所へ手紙を出しますと、此方《こちら》はおきんが山平を呼出しまして、二階で三鉄輪《みつがなわ》で話をして居ります。
きん「どうも先達《せんだって》は有難うございます、貴方、あんな心配をなすっては困りますよ、お忙がしい処をお呼立て申しましたのは困った事が出来ましてね」
山「毎度厄介になりまして気の毒でのう、今日は急に人だから何事かと思って来たのだが、どう云うわけだえ」
きん「どう云うたって実に困りますよ、何うしたら宜《よ》かろうと存じまして
前へ 次へ
全303ページ中27ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング