をすれば直《すぐ》に結納を取交せるから」
照「はい、私《わたくし》はあの池《いけ》の端《はた》の弁天様へ、養子を致す事を三年の間|願掛《がんが》けをして禁《た》ちました」
善「そんな分らぬ事を言っては困りますよ、弁天へ行って然《そ》う云って来い、願掛けは致したが、親の勧めだからお願《がん》を破ると云って来い、それで罰《ばち》を当てれば至極分らぬ弁天と申すものだ、そんな分らぬ弁天なら罰の当てようも知るまいから心配はありませんよ、これ何時まで子供の様な事を云って何うなります、私が約束して今更|変替《へんがえ》は出来ません、直様《すぐさま》返事をおしなさい、これ照、困りますなア」

        六

妻「貴方、そう御立腹で仰しゃってもいけません……何時までもお前子供の様で、養子をすると云うものは怖いように思うものだけれど、私も当家へ縁付いた時は、こんな不器量な顔で恥かしい事だと否々《いや/\》ながら来ましたが、また亭主となれば夫婦の愛情は別で、お父様お母様にも云われない事も相談が出来て、結句頼もしいものだよ、あいとお云いよ/\、泣くのかえ」
善「なに泣くとは何事、泣くという事はありません
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