何だえ」
文「へえ/\真平御免を蒙ります」
太「何うも恟《びっく》りする、誰だえ」
文「私《わし》は此処《こゝ》にいるお繼の実の伯父で百姓文吉と申します、私は今日|他処《よそ》へ行って先刻《さっき》家《うち》へ帰ると、敵討に行ったと云いますから、家の男を連れて駈けて参《めえ》りましたが様子が知んない、其処《そこ》らで聞くと此家《こゝ》だと云うから、済まぬようだが窃《そ》っと這入って、裏へ廻って様子を聞いて居りますと、人違いだ/\と云う声がするから、はてと思って聞いて居りましたが、間違いとは云いながら、少《ちい》さい時分に別れたお前様の子、それを貴方《あんた》が知らないとは云いながらはア斬って殺すと云うは、若い時分の罪だと懺悔《ざんげ》する其の心持《こゝろもち》を考えますと、我慢しようと思いましたがつい泣いたでがんす、何うも飛んだ間違いに成りました、これ嘉十、もう鎌なんざアぶっ放《ぽ》ってしまえ」
太「何うもお恥かしい事がお耳に入って面目次第もございません」
文「何うか助かり様が有りましょうか」
太「迚《とて》も助かりますまいとは存じますが、此の辺に生憎《あいにく》療治を致す者もござらぬ
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