、手前少々は傷を縫う事も心得て居りましたが、つい歎きに紛れて……何しろ焼酎《しょうちゅう》で傷口を洗いましょう」
山「伯父|様《さん》宜く来て下すった」
 と云う声も絶々《たえ/″\》でございますから、
太「確《しっ》かりしろ、今傷口を洗うぞよ」
 と云う中《うち》に山之助は最《も》う目も疎《うと》く成りますから、片方《かた/\》に山平の手を握り片方はお繼の手を握って、其の儘山之助は呼吸は絶えましたから、お繼も文吉も声を揚《あ》げて泣倒れましたが、
太「幾ら歎いても致し方がない、私《わし》が親と知れてはぱっとして上屋敷《かみやしき》へ知れては相成らぬから、何卒《どうぞ》親でない事に致したい、それにはお前方が確かな証人だに依って、敵と間違えて斯様《かよう》々々に成ったと云う事を細かに訴えて検屍を受けんければ成らぬから」
 と是から百姓文吉に山之助の女房お繼が証人で、直《すぐ》に細かに認《したゝ》めて訴え出でましたから、早速検屍が出張に成って傷口を改めましたが、現在殺された山之助の女房と伯父|両人《ふたり》が証人で、全く人違いで斯様な事に相成りましたと云うから、さしたる御咎《おとがめ》もご
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