此の水島太一という姓名を附けなければ斯の様な間違いも有るまい、是も皆若い時分からの罪で斯う成るのであろう、あゝあ恐るべき事である、これ忰手前なア何うかして助けたいが、実は迚《とて》も助からぬ事と存じて居ろうが、後々《あと/\》の事には心を残さず往生致せ、縁有って手前の家内に成って居《い》るお繼という此の娘は私が引取って剣術を仕込み、手前の為には姉の敵に当る水司又市を捜して屹度《きっと》敵を討たせるから、心を残さず往生致せよ」
山「はい/\/\有難う/\、逢いたい/\と思うお父様《とっさま》にお目に懸り、お父様のお手に懸って死にますれば何も心を残す事はございません、これお繼少しの間でも御厄介になった伯父さんやお婆さんに何卒《どうぞ》宜しくお前云ってお呉れよ」
繼「はい山之助さん確《しっ》かりして下さいよ、お前さんが死ねば私は此の世に生きて居《お》られません」
 と山之助に取縋《とりすが》って泣きまするから、堪《こら》え兼《かね》てお照も泣伏します。水島太一も膝の上に手を置くと、はら/\/\と膝へ涙が落ちる。すると台所の方から大きな声で
「御免なせえまし」

        五十八

太「
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