ぼしを致さんければ世に居《お》られぬ」
照「誠に御尤もでございます」
山「お父様《とっさま》え、貴方も水司又市を捜す身の上と仰しゃいましたが、何故《なぜ》あなたは水司又市に似た様な名をお附け遊ばした」
太「手前は何も存ぜんが、お祖父様《じいさま》は元信州の者で、故《ゆえ》有って越後高田に近き山家《やまが》へ奉公住みを致して居《い》ると、或日《あるひ》榊原公が山猟《やまがり》にお出《いで》遊ばして、鳥を追って段々山の奥に入《い》り、道に迷って御難儀の処へお祖父様が通り掛って、御案内をして城中へお帰りに成ったから、うい奴と仰しゃって先君《せんくん》がお取立に成った、是が私《わし》の先祖で、其の時は白島|太一《たいち》という名前で有ったが、山を平らに歩かせたという所から山平という名を下すった、それ故先君から頂戴の名を大切に心得て名を汚《けが》すな/\という遺言が有ったなれども、私は実に家名を汚す不孝不義の山平ゆえ、先代が頂戴の名を附けて居ては成らぬと云うので、信州水内郡の水と白島村の島の字を取って苗字《みょうじ》に致し、これに父の旧名太一を名告《なの》って水島太一と致したが、今と成って見ると
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