茶碗を打付《ぶッつ》け小さい土瓶を取って投げる所を、横合《よこあい》からお繼が、親の敵覚悟をしろと突掛けるのを身を転《かわ》して利腕《きゝうで》を打つと、ぱらり持っていた刃物を落し、是はと取ろうとする所を襟上《えりがみ》を取って膝の下へ引摺寄せる、山之助は此所《こゝ》ぞと切込みましたが、此方《こちら》は何分手ぶらで居った所、幸いお繼が取落した小刀《しょうとう》が有ったからそれを取って、
太「これ怪我を致すな、人違いを致すな、宜く心を静めて面体《めんてい》を見ろ、人違い/\」
 と二三度打流したが、相手の方から無二無三に打って掛るから、
太「これ人違いを致すな」
 と払い除けました、其の切尖《きっさき》が山之助の肩先に当ると、腕が利いて居る、余程深く斬込みました。
山「あア」
 どんと山之助が臀餅《しりもち》をついたなり起上る事が出来ません、山之助が斬られたのを見るとお繼が
「わーっ」
 と其の場に泣倒れました。
太「これ何処《どこ》へ参って居《お》るかな、これ照や、狼藉者[#「狼藉者」は底本では「狼籍者」]が這入ったが、何処へ参って居《い》るか、これ早く燈光《あかり》を持って参れ、燈光
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