するとお前、お繼も山之助も飛上って、さア是から直《すぐ》に敵を討ちに行《ゆ》くと云うから、待てえ、向うは泥坊を取って押えるような豪《えら》い侍だから、か弱い汝《おめえ》ら二人で駈《か》ん出しても仕様がない、返り討にでも成ってアならねえから待っちろと云うのに、聞かないで駈ん出すから、己《おら》ア出て押えようと思ったら、突転《つきこか》して駈ん出すだ、追掛《おっか》けることも出来なえから、早く汝《われ》が帰らば宜《よ》いと心配ぶって居たゞ、早く何うかして追掛けて呉んなよ」
文「こりゃア困ったなア、それだから己《おら》が不断から然《そ》う云って置くだ、二人で行っても屹度《きっと》先方《むこう》に斬られもんだ、よしんば斬られんでも怪我アするは受合いだアから、何《ど》んな事が有っても己を待ってる様に云うだ、婆様何故遣ったゞえ」
婆「何故遣るたっても遣らない様に仕ようと思うと、突除《つんの》けて行って、留《とめ》ても留らぬから仕様がないだ」
文[#「文」は底本では「山」]「そりゃア困ったなア……これ嘉十《かじゅう》手前《てめえ》も一緒に行《ゆ》け、二人に怪我をさしては成んねえから、己《おら》も直ぐ
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