》一ぷく。
五十五
引続きまする巡礼敵討のお話で、十八歳に成りまするお繼に、十九歳に相成りまする白島山之助が、互に姉の敵親の敵を討ちたいと、三年の間諸方を尋ねて艱難苦労を致しましたる甲斐有って、思わずも只今お百姓が来ての物語に、両人《ふたり》は飛立つ程嬉しく思いますから婆アの留《とめ》るのも聞入れずに見相《けんそう》を変え、振払って深川富川町へ駈出します。すると暫《しばら》く経《た》って帰ったのは伯父の文吉でございます。婆《ばゝあ》は両人が駈出してから立ちつ居つ心配して泣いて騒いでも、七十を越した婆様《ばあさま》でございますから、只騒いで心配するばかり、何うする事も出来ません。
文「婆さま、今帰りました」
婆「おゝ文吉|帰《けえ》ったか、己《おら》アまア心配ばかりして居ったが、何うもまア飛んだ訳に成ったゞよ」
文「何うしたゞえ、何時でも婆さまは仰山な事を云って己《おら》ア本当に魂消《たまげ》るよ、まア静かに」
婆「静かにたって、お前《めえ》先刻《さっき》茂左衞門《もざえもん》が家《うち》へ来ての話に、敵の水司又市が深川の富川町で按摩取に成ってると云う事を話したゞ、
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