た侍は、深い三度笠をかぶり、廻し合羽を着て、柄袋の掛った大小を差して、盲縞《めくらじま》の脚半に甲掛、草鞋という如何にも旅慣れた扮装《こしらえ》、
侍「是々巡礼落合へ行《ゆ》くなら是を左の方へ付いて行け」
繼「有難う存じます」
 と是から教えられた通り左へ付いて行くと、何処まで行ってもなだれ上《あが》りの山道で、見下《みおろ》す下の谷間《たにあい》には、渦を巻いてどっどと落す谷川の水音が凄まじく聞えます。日はとっぷりと暮れて四辺《あたり》は真暗《まっくら》になる。とお繼は気味が悪いから誰か人が来れば宜《い》いと思うと、後《うしろ》の方からばらばら/\/\/\
「巡礼、巡礼|暫《しばら》く待て」
 と云われたが真暗で誰だか分りません。

        四十八

侍「これ巡礼」
繼「はい/\/\」
典「思い掛けねえ、手前《てめえ》久振で逢ったなア」
繼「はい何方《どなた》でございます」
侍「何方もねえもんだ、己は桑名川村にいた柳田典藏だが、汝《てめえ》の姉のお蔭で苛《ひど》い目に逢って、あれまで丹誠した桑名川村に居《い》られないように成ったのだ、その時は家財や田地を売払って逃げる間も無い
前へ 次へ
全303ページ中212ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング