《すはら》という処に泊りましたが、宮之越から此処迄は八里半五丁の道程でございます。斯様に始終両側を流して同じ宿には泊りまするが、なれども互いに怖くて言葉を掛けません。これから皆様御案内の通り福島を離れまして、彼《か》の名高い寝覚《ねざめ》の里を後《あと》に致し、馬籠《まごめ》に掛って落合《おちあい》へまいる間が、美濃《みの》と信濃の国境《くにざかい》でございます。此の日は落合泊りのことで、少し遅くは成りましたが、急ぎ足ですた/\/\/\と馬籠の宿を出外《ではず》れにかゝりますると、其処《そこ》には八重《やえ》に道が付いて居て、此方《こっち》へ往《ゆ》けば十曲峠《じっきょくとうげ》……と見ると其処に葭簀張《よしずばり》の掛茶屋《かけぢゃや》が有るから、
繼「少々物を承わりとう存じますが、これから落合へまいりますには何う参りましたら宜うございますか」
 と云いましたが、婆さんは耳が遠いと見えて見返りもせずに、頻《しき》りに土竈《へッつい》の下の火を焚《た》いて居りますから、また、
繼「あの是から、落合へ行《ゆ》くには此方《こちら》へ参って宜うございますか」
 と云うと、奥の方に腰を掛けて居
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