》いている者には振られ、殊《こと》に面部を打破られ、其の頃武家が頭《かしら》に疵が出来ると、屋敷の門を跨《また》いでは帰られないものでございました。又市は無分別にも中根善之進を一刀両断に切って捨て、毒食わば皿まで舐《ねぶ》れと懐中物をも盗み取り、小増に遣《や》りました処の二十両の金は有るし、これを持って又市は越中国《えっちゅうのくに》へ逐電いたしました。此方《こちら》は翌朝《よくちょう》になりましてもお帰りがないと云うので、下男が迎いに参りますと、七軒町で斯様《かよう》/\と云う始末、まず死骸を引取り検視沙汰、殊に上役の事でございますから内聞の計《はから》いにしても、重役の耳へ此の事が聞え、部屋|住《ずみ》の身の上でも、中根善之進何者とも知れず殺害《せつがい》され、不束《ふつゝか》の至《いたり》と云うので、父善右衞門は百日の間|蟄居《ちっきょ》致して罷《まか》り在《あ》れという御沙汰でございますから、翌年に相成り漸《ようや》く蟄居が免《ゆ》りましたなれども、最《も》う五十の坂を越して居ります善右衞門、大きに気力も衰え、娘お照《てる》と云うがございまして年十九に成りますから、これに養子を
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