すから、だん/\諸方を歩いて聞きますると、人の噂に川口には不思議な尼がある、寺男がお経を教えて、尼が教わるということだが、大方あれは野合《くッつきあ》って逃げた者であろう、寺男は何でも坊主で、女は何歳《いくつ》ぐらい、是々《これ/\》是々と云うことが、ぷいとお繼の耳に這入ったから、扨《さて》はと直《す》ぐに川口へ来て尋ねると、つい先日《さきのひ》出立したと云うことを聞きましたから、さては山越しをして信州路へ掛ったのではないかと思いまして、信州路へかゝりましたが、更に手掛りがございませんから、信州路へ這入って善光寺へ参詣をいたし、善光寺から松本へかゝって、洗馬《せば》という宿《しゅく》へ出ました。洗馬から本山《もとやま》へ出、本山から新川《にいがわ》奈良井《ならい》へ出て、奈良井から藪原《やぶはら》へ参りまするには、此の間に鳥居峠《とりいとうげ》がございます。其の日は洗馬に泊りまして、翌朝《よくちょう》宿を立って、お繼が柄杓を持って向う側を流して居ると、その向側《むこうがわ》を流して行《ゆ》く巡礼がある。と見ると、是も同じ扮装《いでたち》の若衆頭《わかしゅあたま》、白い脚半に甲掛草鞋笈摺
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