》は思い切って切りますぞ」
と嚇《おど》す了簡と見えて、道中差を四五寸ばかり抜掛けました。是を見るとおやまは驚きまして、
やま「あれえ人殺し」
と云って駈出しました。山之助も驚き飛上り、又市の髻《たぶさ》を把《と》って、
山「姉《あね》さんを何うする」
と引きましたが、引かれる途端に斯う脇差が抜けました。一方《かた/\》は抜身を見たから、
やま「人殺しイ」
と駈出しますのを又市は、人殺しと云うは惠梅を殺した事を訴人《そにん》すると心得ましたから、人を殺し又悪事を重ねても己《おのれ》の罪を隠そうと思う浅ましい心からおやまを遣《や》っては成らぬと山之助を突除《つきの》けて土間へ駈下《かけお》り、後《うしろ》から飛かゝって、おやまの肩へ深く切掛けました。おやまは前へがっぱと倒れる、山之助は姉の切られたのを見て驚き、うろ/\して四辺《あたり》を見廻しますと、枕元に合図の竹法螺《たけぼら》が有りますから、是を取って切られる迄もと、ぶうー/\と竹法螺を吹きました。山家《やまが》では何方《どちら》にも一本ずつ有りまして、事が有れば必らず是を吹きますから、山之助が吹出すと直《じき》隣でぶうーと
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