うかと種々《いろ/\》心配して居りますと、
又「お前これ程まで云うても云うことを聴かれぬか」
やま「聴かれません、怖くって、恐ろしい、お置き申すわけにはいきません、只《た》った今おいでなすって下さい」
又「云う事を聴かれぬ[#「聴かれぬ」は底本では「聴かれね」]時は仕方がない、今こそは寺男なれども、元|私《わし》は武士じゃア、斯う言出して恥を掻《かゝ》されては帰られませんわ、さア此処《こゝ》に私の刃物がある」
やま「あれ、脇差を持っておいでなすったね」
又「さア、可愛さ余って憎さが百倍で殺す気に成るが、何うじゃア」
やま「これは面白い、はい、私が云う事を聴かない時は殺すとは恐ろしいお方、さア殺すならお殺しなさい」
又「これさ、何うしてお前が可愛くって殺せやあせぬ、殺すまでお前に惚れたと云うのじゃ」
やま「何を仰しゃる、死ぬ程惚れられても私は厭だ、誰が云う事を聴くものか、厭で/\愛想が尽きたから行って下さいよう」
又「愛想が……本当に切る気に成りますぞ」
やま「さアお切りなさい」
又「然《そ》う云われても殺す気ならば、是ほど思やアせんじゃアないか、えゝか、ほんに云う事を聴かぬと、私《わし
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