真実を尽すが、なれどもお互いに此の気の置けぬ様に生涯一つ処に居る事は、□□れて居ないでは居られるものではないなア、本《もと》が他人じゃアが年を取って居るから亭主《ていし》に成ろうとは云わぬが、只《たっ》た一度でも□触れて居れば、是から先お前が亭主を持とうとも、どう成っても其処《そこ》が義理じゃ、追出しもせまい、是程まで思詰めたから只た一度云う事を聴いて下さい」
と云われ余りの事に腹が立ちますから起上って、おやまは又市の顔を睨《にら》みつけ、
やま「只た今出て行って下さい、呆れたお方だ、怖いお方だ、何ぞと云うと命を助けた疵が出来たと恩がましい事を仰しゃって猥《いや》らしい、此の間は御酒の機嫌と思いましたが、今の様子のは御酒も飲まずに白面《しらふ》の狂人《きちがい》、そんな事を仰しゃっては実に困ります、そんなお方とは存じませんで伯父も見損じました、只《たっ》た今出て行って下さい」
又「お前、何で私《わし》が是程まで惚れたに愛想尽しを云って、年を取って男は醜《わる》くも、それ程まで思うてくれるか憫然《ふびん》な人という情《じょう》がなければ成らぬが何んで其の様に憎いかえ」
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